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西野カナ『LOVE one.』(09.06.24)

LOVE one.

 <賭けて コケて 泣いて emotion 止められない>とは、なかなかどんな文芸家でも出てこない言葉です。英語が、邦楽の標準より達者な、洒脱な歌詞が得意な、美しい歌うたい、西野カナの、ファーストアルバムです。冒頭の詞は、デビューシングルだった「I」のBメロです。頭がいい。そうして、おっとり。善良だと、すぐわかる。いい、気質性の、三重県出身の、ソニーを代表する、女性歌手です。

 いつの時代も、ソニーはありますが、ソニーにはソニーソニーという、その特色が、編曲単位であるんでしょうね。何故そういうのがあるのか、もしくはもっと理由があるのか、誰かソニーの方、教えていただきたい、ぐらいです。

 ハイトーンが、得意な、これはこの方の声域は、ソプラノですよね? いつも、ぐっと声を上に、細く上げるとき、デジタルを超えた、アナログの感動に達します。彼女は、寓話を歌詞にするのが特技で、また、そのほかに、自史を歌った曲も、多数、存在しています。いつも、彼女の中には、丁寧な諦念があり、容赦なく襲いかかったであろう、悲しい記憶やら、はたまた、少女から、大人に変わる頃の、あどけないのとは違いますが、フレッシュな感性に満ちたテーゼが美しくも、せつないので、これはいつまでも永遠に持っていく、武器だと思ってください。

 歌を歌うということへの、素直な情熱が、ひしひしと聞こえてきます。誰でもそうだと思いますが、少女時代に、何を聞いて、そうして歌手になりたいと思ったのか、そこにはそれぞれの人たち、それぞれの、状況、理由があったりするものだと思います。カナさんは、どうして、歌手になりたいなと、思ったのでしょうか。カラオケ屋とか、お風呂場の歌手じゃなくて。そうして、誰が好きな音楽家だったのでしょう。

 憧れと、自分の編曲のパターンは、なぜか知らないけど(自然の勢いかな)、一緒になることがありません。けど、なんかつながっているものなんですが、カナやんのは、あんまりつながってなさそうに見えます。でもどんな音楽の聞き方をして来たんだろう。それにしても、優しいですね。人間のいいところを、結晶化させたような、いい性格をしています。そうして、男運が、あんまりなさそうに見えます。歌が好きなんだろうなあ、と、いつも嬉しそうに、商業歌手基本セット通りに(笑)、歌うさまに、「商業歌手はどこでこうやって同じように歌うんだろう」と思えますよね。