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Fiona Apple / When The Pawn... (99.11.09)

When The Pawn...

 

 <真実>とは、甘美な響きですか? 人によって、そこには違う意見があると思います。けれど、甘い果実が、嫌いな人は、きっといないだろうと、信じています。<私は真実をいつも知っているのに、それを理解し、それを真実だと分かち合ってくれる人はいないんだ>というような、そういう悲しみに満ちた、オルタナティブな、ヒップホップのリズムパターンの、美しいピアノロック、フィオナ・アップルの表現です。

 その、若い女性の、精神性の、際立ち方と、理解者が乏しいという、悲しみこそが、私からは、とても魅力的に感じられる、と書いたら、怒られるでしょうかね。けれど、私も、とても、よく、真実を知っています。そうして、近頃、それを嬉しいと、好ましいと、思ってくれる人たちと、共に生きていたりします。それが、とても、嬉しく好ましく、きっと、現在の貴女、フィオナ・アップルも、そんな感じで暮らしているんじゃないかな、と、想像していたり、しますね。

 なんか自分を見るような目で、格好いいピアノの音色と、海よりも深い声に、感謝しながら、感動している、自分が居る次第です。貴女が、アメリカのニューヨークという都会に、生まれ、生きてきて、ひどいトラウマがあるのだと、さんざんその頃、話を聞いたのですが、貴女は、そういう傷を歌いたいのではなくて、単に、いい題材だろうから、と、厳しい表現を、芸として問うたのだろうと、ふと最近気づきました。

 それは、もちろん、永遠に続く道、芸術的な表現は、すべての人の身の養えになりますから、そうすべきだと、力説します。けれど、キーボードを紐解きながら、いざ、コンサートで、となったとき、やっぱり痛みは痛いですよね、つい涙零れたりとか、したんだろうな、と、やっと真実に気づいて。私も、まあこんな調子ですから、真実とは、わかりづらいものだな、と思ったりしますが。

 それでも、それにしても、美味しい果実だな、と、思ったりする。それがとても眩しい。99年の美しい、少女から成年に変わる時期の、セカンドアルバムだったものです。今も、当時の盤のままで持っていますし、ときどき取り出したりしますが、本当に私の、たからものです。

 フィオナ・アップルとは、青い林檎にも似た、真実と、甘美さと、ジューシーさに満ちた、新陳代謝をいい意味で促進するような、素晴らしい果実のことだと思います。誰もが、持ち回りで、通る道です。痛みに囚われず、自由に。