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Avril Lavigne / Head Above Water (19.02.15)

Head Above Water

 

 例えば、重油の溢れた海のような、あるいは、砂塵の土地のような、隔たった具象に、あなたが、ひとり取り残されていても。あなたは、闘いを挑み、勝とうと、願えるものでしょうか。荒涼とした、平原の心境に、あなたが、立たされたら、どうやってここから、駆け出そう、と思えるものでしょうか。

 ああ、大きな景色に出会い、フィクションでない大成功を収めても、尚も人生とは遠い航海。息が詰まりそうな大海原へ、懸命の思いでダイブ。ただダイブ。息が詰まる前に、あたしを、引き上げて欲しい。水面に。この、アヴリル・ラヴィーンの6枚目のアルバムは、彼女が、闘いながら、高く高く打ち上げた、あたしは生きていく、という。人間宣言の、美しい盤です。黒く、美しいジャケットは、彼女が、デビューした頃に発表された、日本を代表する作品、宇多田ヒカルの、『DEEP RIVER』と、酷似しています。

 いつか、本当に素晴らしい、女性で一番だと言われる、女らしい作風で知られる、立派な音楽家になるんだ、という彼女の夢が、半分ぐらい達成された作品です。それは、まだ夢半ば、されど歩いていき、これからもっと、自分ひとりで、凄い音楽を作っていくんだ、という。彼女らしい、ちょっと過剰な自信に満ちた、夢のように美しい音楽です。

 彼女、ラヴィーンが、ギターを掲げた、あらわな姿だろうジャケットからは、あたしを守る鎧は、音楽という力なのだ、と。その実存を刻んだ。夢のように素晴らしい、作品です。彼女は、素晴らしい旋律線を築く、素晴らしい楽曲者でもあります。

 今回は、特に、未来、ずっと生きていきたい、を目指して。共作者に、自分に足りていないところ、制作上の知らないところとか、はたまた、調整が必要なところの、調整とかを、熱心に頼んで、作ったんだろう、と、思います。

 今回、ボーカルには本当に気を使ったと、ソウルフルな、この世で一番上手い範囲の、歌が本当に、理屈なしの迫力で迫ってきます。

 ラヴィーン、あなたは、本当に自信家の、野心家な人ですね。とてもそれがよくわかりました。また、それが、あなたにとって、どれほどの素晴らしさか、わかるようにも、なりました。

 この世に、生かされている、という、感覚を、あなたを、理解している人がいる、という喜びを。万角の喜びで、観ていてください、と叫ぶ、無責任でない、煽りに。感謝をしながら、これからも、あなたを、見守っていこう、と思います。